有限会社 編(あむ)書房
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7月5日 理想の出版社 

 
 世間的には景気が上向いてきたが出版不況は相変わらず。だが、そのせいで自分の会社もダメなんだ、とは思いたくない。どんな時代でも、景気のいい会社もあれば潰れるところもある。私は行き詰まり、弱気になると原点を思い出すことにしている。どうして独立しようとしたのか。それは、何よりも本が好きだったことと、こういう本が出したいという理想があったこと、そしてサラリーマンでは味わえない自由を得たかったからだ。

 そして出版社を作ったからには、自分が納得できる本を追求し一冊一冊をまるで編物を編むように丁寧に編集していきたい、そんなことを考えていた。当然のことだが、そんな贅沢なことをしていれば資金的に苦しくなる。紙代、印刷代、印税、をはじめとして、すべての代金を翌月末には支払うことを基本にして、それを崩したとは一度もない。この業界はとにかく支払いが遅い。それをいいことだとはどうしても思えなかった。装丁家のKさんから「普通の出版社は本が出版されてから3ヶ月後にようやく入金になりますが、編書房は仕事がすんだらすぐに支払ってくれるので助かります」と言われてびっくりした。

 この7月に出版した『三分間で語れるお話』(マーガレット・R・マクドナルド著、佐藤涼子訳)で出版点数は17点になった。増刷までこぎつけた本は『出版に未来はあるか?『図書館逍遥』『出版クラッシュ!』『語ってあげてよ!子どもたちに』など、はずかしいくらい少ない。しかし、一人出版社だから、自分の給料が少なくても、滞っても、丁寧な本づくりができた。それは自分でも納得している。編書房の最大の武器は、絶対の信頼がおける人と頼れる友人に囲まれていること。そして、いざとなれば、“何でもやるわ”という気持ち。出稼ぎをしたり、書評を書かせていただいたりして、なんとか息をついてきた。最近はまた季節労働者をしている。他社で編集仕事をするのは面白い。自分の盲点も知った。仮に、もっと行き詰って暇になれば読書三昧、勉強三昧の生活をすればいい。誰にも媚びずに楽しく好きな仕事ができるのは幸せ。

 理想の出版社は山本七平氏のやっていた山本書店。ここの本は30年たっても古びていないし、古本屋で買うとものすごく高い。時間の経過に耐えられるような本なのだ。時を経ても古びない本、というのは最高の理想である。理想の出版社に向かって牛のように遅い歩みだがなんとか継続していきたい。継続するのはほんとに難しい。

 
 

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