編集の応援仕事も一段落した。手伝いの出かけた出版社では、とにかく新学期に間に合わなければ、どんなにいい本ができてもあとの祭り。4月の展示会に間に合わせること。これが至上命令だ。もっともっとシビアに校正をしたかったが、時間がない。最後は妥協の連続だったけれど、なんとか間に合って12巻を完成させることができた。楽しい仕事だった。今度は我が社の本に専念することにした。3ヶ月ばかり勤め人生活を味わったけれど、かなり疲れた。
6月に出版する『三分間ストーリー(仮)』(マーガレット・リード・マクドナルド著、佐藤凉子訳)の原稿を訳者からようやくいただいた。ストーリーテラーのための短いお話が80話も詰まった楽しい本。これはどれもこれも3分以内で語ることができる。ものによっては30秒とか1分で終わってしまうものもある。たとえば、以下は1分でできるなぞなぞのお話。
<オウムと牧師>
ヨーロッパの民話(1分 考える時間も含めて)
むかし、一羽のオウムが金のかごに入れられ、ある銀行家に飼われていました。
毎日銀行家は、オウムに彼とおしゃべりをするよう命令しました。
オウムは、銀行家に何度も何度も自由にさせてくれるように頼みましたが、言うことを聞いてはもらえませんでした。
ある日、一人の牧師がこの家を訪れました。
牧師がオウムをほめようとかごに近づくと、
オウムが言いました。
「自由になりたいのです。
かごから逃がしてくれませんか?」
牧師は、このかわいそうな鳥が気の毒になりましたが、
銀行家の鳥を、勝手に逃がすわけにはいきません。
けれど、牧師はオウムに向かってうなずくと、片目をつぶって見せました。
それから牧師は数歩よろよろと後によろめくと、ぱっと気を失い倒れてしまいました。
銀行家は、牧師を助けようと駆け寄りました。
次の日、オウムは逃げ出しました。
どうやってオウムは逃げ出したのでしょう?
☆ 聞き手に尋ねる。
答え:
牧師は気を失うふりをして、オウムにどうしたらよいかを教えたのです。
次の日オウムは、かごの下に横たわり、足を上に突き出し、動こうとしませんでした。飼い主は、オウムが死んだと思い、ごみの山の上に投げ捨てました。それから、オウムは飛び去ったのです。
80話近くもあるので日本の民話やインドの仏陀のお話などバラエティーにとんでいる。ストーリーテリングをはじめた初心者や長いお話をおぼえるのが苦痛な人にぴったり。ちょっとした時間の隙間を埋めるための小話をいっぱい知っていると便利でもある。今度も訳者の佐藤凉子さんが実演販売をしてくれる、とのこと。版元にとってはほんとうにありがたい。
挿絵、表紙画は今回も出久根育さんにおねがいした。大きな賞を受賞して、いまや売れっ子になったので、たいへんに忙しいらしい。おまけにプラハに住んでいるので、作品のやり取りは大変だが、彼女のステキな挿絵のファンは訳者の佐藤さんをはじめとして、たくさんいる。もちろん私もそのひとり。こんどは大人っぽいお話が多いのでどんな挿絵を描いてくださるのか、楽しみ。