永久に変わることなく、
自らを責めさいなむひとりの旅びと
――まことの平和(やすらぎ)を決して知ることのない・・・・・・
これは『本は生まれる。そして、それから』(小尾俊人、幻戯書房)に引用されていた若き日のゾルゲの詩。なにかハッと胸を突かれる思いでこれを何度も読みました。人間が生きていくことの悲しみ。ゾルゲが自分の運命を予感していたような詩。
「――まことの平和(やすらぎ)を決して知ることのない・・・・・・」というフレーズはまるで小社の現状のようです。出版社というのは心のやすらぐことはありません。こんなことを書くからには、編書房も相当に危ないぞ!と思われるかもしれません。そう、危ないのかも(笑)。時代の大転換期にあるように私には思えます。あちらからもこちらからも、不景気な話ばかり。イラク戦争の影をひしひしと感じます。アメリカという国の歴史的な罪、フセインの愚かさが、虫けらのように殺されていく兵士を民衆をつくりだします。ブッシュや小泉やフセインと同じように罪深い、大勢の日本企業の経営者が、社員の未来の夢を奪い、活力を奪い、抜け殻のような人間を生み出すのです。彼らは自分がそういう存在だとは気がつきもせずに、無意識に・・・・・・。まことに人間は罪深い存在です。先月、大返品の話を書きました。予想したとおりの無残な結果でした。でもここで死んではいられません。『サヨナラ、学校化社会』(上野千鶴子、太郎次郎社)を読んで、げらげら笑い、どんな状況に陥ろうとも生きていく知恵を学びました。フリーターでもなんでもいいから、とにかく生き延びろ!という上野千鶴子氏のメッセージを受け取ると、「やっぱり本はすばらしい」。そう思わずにはいられません。いい本です。出版の仕事、編集の仕事の使命はこういう本を生み出すこと。そこにあるのでしょう。
ひたすらシコシコデータベースを作り、新書を読む日々
国立情報学研究所の「新書・選書マップ」という仕事のお手伝いをしている。これは今年後半に完成予定で、今はひたすら秘密の基地を作っている。完成後には一般公開される。とにかくたくさんの新書を読み、テーマごとの書評を作る。例えば「ウンコとトイレ」とか「インポ」など、普通とはちょっと違うおもしろいテーマを自分たちで見つけようと励んでしまう。もちろん「ナショナリズム」「バッハ」「家族」「睡眠」などなど現代的なしかも大切な主題がほとんどだが。テーマをみつけると本を並べてデータベースを作り、書評を書く。やっている私たちもあまりの面白さに困っている。新書をやたらにたくさん買いこむようになってしまった。おまけに、他の仕事をやる気にならず、本業である出版も、大返品やら売れないせいで、なんだかひどく疲れてちょっとお休み。他社への企画の売り込みもちょっとお休み。しばらくは「読む」がメインの仕事になりそうだ。ちなみに私のお勧め新書ベスト5は「ナショナリズムの克服」(集英社新書)、「シンプル人生の経済設計」(森永卓郎、中公新書ラクレ)、「フィレンツェ」(高階秀爾、中公新書)、「江戸庶民の旅」(金森敦子、平凡社新書)、「私の脳科学講義」(利根川進、岩波新書)。普段はなかなか手を出せず、こういう仕事をしたからこそ巡り合えたすばらしい本。