有限会社 編(あむ)書房
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ゴッホの死は他殺

さっと読んでしまいました。表紙も綺麗で魅力的。図版が多いのもうれしい。この作者の熱意とテーマを追いかける誠実さには脱帽です。ただし文章表現の稚拙さや、強引なきめつけ方はちょっと引っ掛かりました。「芸術家」として「デリケートな魂」なんぞを自明の理として描いてきた今までの画家論のうさんくささを剥ぎ取る試みは大いに大拍手なんだけれど、ここまで荒っぽく表現してしまうのは逆効果。でもそれを救ってくれるのはおおらかな画力のある図版たち。それと、きちんと調べてあるので紀行文を好む人たちにはエンターテインメントとして喜ばれるかもしれませんね。
(小野暢子さん。翻訳家・女性)

『ゴッホの死は他殺』は素晴らしい本ですね。カラーをこれだけ入れて表紙の斬新なデザインと…。テーマはもちろん興味がありますし、恐らく新聞や雑誌もとりあげるでしょう。それにしてもパワーはたしかにあります。
(櫻井秀勲さん。評論家・男性)

通説に迎合するっことなく、独自の観点からの切り込みは素晴らしく、楽しくよませていただいた。
(下角勝良さん。会社員・男性)

面白そうですね。多色刷りグラビアが美しいですね。装丁が秀逸です(イラストレーター、酒井賢司さんの久々のヒットでしょう)。やはり本はハードカバーのほうが存在感が強いですね。
(出久根達郎さん。作家・男性)

まず事件の現場(アルル、オーヴェルなど)に立ち、そこから想像をふくらませて過去を肉付け。さらに絵の内容から画家の感情を読み解いていく…そんなワイドショー感覚?に乗れるか乗れないかで、この本の楽しみ方が変わってきますね。
私は前半部は乗れませんでしたが、後半は著者の想像力がほとんど暴走!って感じで、楽しみながら読みました。(同様に、ゴッホをめぐる思考が妄想じかけに大暴走する名著『ヴァン・ゴッホ』(アントナン・アルトー著)が参考文献にあがってないのは意外でした。
7年前アルルに行ったのですが、この本にも出てくるとおり、確かに美人が多かったです。次の目的地へ向かうため電車を待っていたら、あまりにも陽光が心地よくボーっとして、うとうとホームで昼寝して、電車を逃してしまったことなど思い出しました。
(冨田健さん。TRC「図書館の学校」編集者・男性)
<書評タイトル:これは一級のサスペンス・ミステリーだ。自分もホームズやコロンボになった気分でゴッホ他殺説を追っていた。>

 『出版に未来はあるか』(安原顯その他の共著)という超過激な本を出した編(あむ)書房。はたして大丈夫か、死者の1人や2人や3人ぐらい出たのではないかと心配していたが、どうやら無事だったようだ。だが新刊『ゴッホの死は他殺』にしても過激といえば過激きわまりなく、この出版社、ちょっと目が離せない。しかも「完全犯罪の仕掛人はゴーギャン」というサブタイトルときては、なんというか、その勇気に感動するしかない。つけ加えておくが、タイトルにせよサブにせよ、スポーツ新聞のように「だった?」とか「か?」とか「〜説」とか一切ついていない。はたして大丈夫かと、また心配になる。

 だが本書はそうした懸念を吹き飛ばす、相当にクオリティの高いノンフィクション。いや傑作ミステリーと言ったほうがふさわしい。ぼくはいっきに読んだが(読まされた)、著者がまるでシャーロック・ホームズやコロンボに思え、気がついたときには自分自身も同化、いっしょに難事件を解決していくような錯覚におちいっていた。さらに、ぼくのゴッホやゴーギャン、ひいては絵画に対する知識はもともと浅いものではあったが、それでも定説として信じこんでいた事柄が次々と覆され、塗りかえられていくことに快感を覚えた。これは著者の筆力もさることながら、ゴッホは他殺だった、そして真犯人はゴーギャンとする著者の確信の深さによるものと思われる。また、本書から伝わる異常ともいえる「熱」と「力」はその確信の深さが生み出したものにちがいなく、それは章を追うごとに加熱し、パワーアップしていく。

 著者田中一郎は1939年、東京生まれ。スウェーデン大使館勤務の経歴をもつが、99年退館。ぼくは未読だが、すでに『秘密諜報員サマセット・モーム』(河出書房新社)を著している。著者がゴッホ他殺説/ゴーギャン犯人説を打ち立てたのは、そのモームの『月と六ペンス』を初めて読んだときというから年季が入っている。「作中のオランダ人画家について、モームは何かを隠している」。そう考えたのがきっかけという。

 つまり本書は、探っていくうちに真相につきあたったという、この種のノンフィクションにありがちのパターンではなく、著者が抱いた「確信」が先にあり、それを論理的かつ客観的に立証すべく調査が進められる。そのキーワードというかヒントになるのが各章に設けられたタイトルで、たとえば《寄宿学校退学の謎》《耳切り事件》《安田火災の〈ひまわり〉に贋作疑惑》《ピストル発射前後の経緯》といったふうに、思わず「なんだなんだ」と乗り出さずにはいられないテーマが提示される。労作であり、力作であると思う。
  最後に苦言を。この表紙、どうみてもダサい。これでは素通りしてしまう人も多いと思うが、めげずに手に取っていただきたい。そして編書房には次刊を期待したい。 (bk1ブックナビゲーター:中山康樹/文筆家 2000.7.18)

 

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